相続手続き~別れと再会と・止まっていた時間が~
ある日のこと、妻(Aさん)が亡くなられたとのことで、その夫(Aさんの夫)から相続手続きの依頼がありました。
Aさんの夫の話によりますと、ご夫婦には子どもはいらっしゃらないのですが、Aさんは再婚で、Aさんの前に結婚されていた当時の実子がいると聞いている、とのことでした。
Aさんは、その当時、訳あって、離婚せざるを得ない状況となり、幼い我が子を手放すしかなかったようです。
それ以来、50年以上もの時間が経過しましたが、Aさんは、一度も我が子と再会することはありませんでした。
戸籍などを取り寄せて、詳しく調査をした結果、Aさんのご長男と連絡を取ることができました。
Aさんのご長男は、実母(Aさん)の存在は知らされていたようですが、当時は幼かったので、Aさんの顔も姿も全く覚えていないとのことでした。
相続手続きをすすめるにあたり、Aさんのご長男のご希望は、Aさんの写真がほしいこと、Aさんの仏壇に線香をあげさせてほしいことの二つでしたが、Aさんの夫はそのことを快く了承されました。
ご長男が、Aさん宅を訪問されるときに、私も同席させていただきましたが、ご長男の仏壇に向かって手を合わせる姿に、亡くなられてからの再会では、残念と言うか、悲しいというか、何か複雑な気持ちでその様子を見ていました。
それでも、50年以上もの間止まっていた時間が、少しだけ動いたような、そんな気がしました。